少年時代、
川はぼく達にとって特別な場所でした。
そこは、
うちから500mのところを流れている
可愛川(えのかわ)です。
中国山地のど真ん中を
くねくね流れていくこの川は、
日本海に注ぎこむ
江の川(ごうのかわ)の水源に近い川です。
水源に近いとは言っても、
深い中国山地の山々から は
たくさんの小さな支流が流れ込んできます。
そのおかげで水量はとても豊かですから、
水源地から20㌔あまりのうちのあたりでも
川幅は50mくらいあります。
そんな川は他県にもたくさんあるでしょうが
この川には世界一の巨大生物が住んでます。
その巨大生物は、
国の特別天然記念物、オオサンショウウオです。
(ぼくらの地域では「ハンザキ」と呼びます)
うちのあたりは
昔から日本有数の大生息地で、
180cmの超大物伝説があります。
オオサンショウウオは最大の両生類として
世界的にも超希少な存在らしいんですが、
ぼくらにとっては怖くて、迷惑な存在でした。
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ヤツらは堰堤の下流側に群生しています。
(いつも数匹が一緒にいます)
「堰堤」
えんていと読みますが、
発電・利水・治水・生物保全などの目的で
川を横断してつくられた堤防です。
オオサンショウウオは、
昭和27年には国の特別天然記念物に
指定されていましたから保護は手厚くて、
堰堤には彼らの生活を守るための
人工的な巣穴がきちんと作られているんです。
そして、
この周辺にはたくさんの魚が集まってきますから
エサも豊富です。
もちろん、ぼくたちの目的も
堰堤に集まる魚ですから
いやでもヤツらと遭遇します。
(畏怖の念を込めて、以下「ヤツ」と呼びます)
魚の獲り方で一番ポピュラーなのは釣りですが
真夏だけは川に潜ってヤス(銛)↓ で魚を仕留めます。
(「とったどぉ~」の濱口で有名)
まっ、どんな方法で魚を捕るとしても
川ではヤツのプレッシャーからまず逃れられません。
別に泳ぐのが早いわけでもありませんし
動きが機敏なわけでもなく
強烈なキバも生えてませんが、
ぼくらをビビらせるには十分でした。
まず、
針に掛かったら
釣り上げるのはムリです。
かかってしまえば針が偶然外れるか、
糸が切れることを祈るしかないんです。
もし運良く針が外れたとしても
ヤツの匂いがついた仕掛けには
小魚すら寄り付かなくなります。
(強烈な匂いです)
それに、特別天然記念物ですから
針にかかってるのを大人に見られたら
メチャクチャ怒られます。
(ぼくらは逮捕されると思っていた)
いきなりヌ~と現れるので
ドキッとします。
いつもは水中にいますが
肺呼吸のヤツらは息継ぎしに水面に上がってきます。
でも、それを予測することは不可能なので
思いがけず近くに浮上してくればギョッとなります。
あのルックスで、しかもデカイですから、、、、、
岸から釣りをしててもこのありさまですが、
夏の潜り猟のスリルは超ド級です。
夏の獲物は女王様、アユです。
いつも素早く泳ぎ回っているアユを
ヤスでゲットするのはまず無理ですから
危険を感じると穴に潜り込む習性を利用します。
まず、アユのいそうな川の瀬に
大きな石をたくさん投げ込みます。
石がぶつかる音で逃げまどうアユは
穴に逃げ込んでしばらく動かなくなります。
そのタイミングを逃さず
急いで川に潜って穴を一つづつ覗き込み
じっとしているアユをゲットするわけです。
(漁協のおじさんはフツーにキレます・・・)
がっ、しか~し、
アユが逃げ込みたくなる穴はヤツらも知っていて、
穴の奥にじっと身を潜めて待ち伏せています。
アユが隠れる穴の中はけっこう暗いので
穴の入口に顔をくっつけて
よーく目を凝さないと中の様子が分かりません。
自然にお尻を突き上げて
穴に顔を突っ込むような姿勢になるんですが、
薄暗い穴の入り口でこんな顔がいきなり迫ってきます↓ ↓ ↓
(水中メガネで見ると実物より大きく見える)
鼻の先数センチでヤツの顔が迫ってくるんですから
反射的に、肺の中の空気を一気に吐き出しながら、
叫び声とともに緊急浮上します。
一度こんな目に合うと、
しばらく潜る気になれないほど、
ヘコミ方はハンパないです・・・・・
少年時代にぼくたちは生き物に対する「畏怖の心」を
ヤツによって教えられました。
人間は最強のハンターでも
自然の所有者でも何でもありません。
ぼくらは海や川のなかでは
ヤツらとは比べもんにならんほど弱いんだから
我が物顔するのは間違った態度だということを
恐怖とともに学んでいきました。
次回は、
天然記念物の第二弾
「オヤニラミ」が主役です。
P.P.S
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